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島崎晋「投資の日本史」

徳川家康による「天下泰平」で生じた“多すぎる戦闘要員”問題を解決するために用いられた「儒学」の効能 藩体制を維持するために求められた人材育成術【投資の日本史】

 けれども、1年やそこらならともかく、山海の幸に恵まれた岡山で数十年も質素な食事を貫くなど、舌の肥えた領民に耐えられるはずはない。領民は彼らなりに知恵を絞り、「ご飯の上に乗せても一菜は一菜」として、ご飯の上に瀬戸内海の海の幸と旬の野菜を華やかに盛りつける「一菜」を考え出した。これが岡山を代表する郷土料理「ばら寿司」の起源となった──そう伝える説もある。

 また、手習所の維持には莫大な経費がかかるため、光政死後には段階的に削減が重ねられ、最終的に1つに統合された。これが閑谷学校で、創建当時の建物がほぼ完全な形で残り、入母屋造りの講堂は国宝、儒学の祖である孔子の像を安置する聖廟は国の重要文化財に指定されている。

■後編記事:(幕末日本の「識字率世界一」を支えた江戸時代の教育制度 都市だけでなく農村部で「寺子屋」が必要とされた理由【投資の日本史】

【プロフィール】
島崎晋(しまざき・すすむ)/1963年、東京生まれ。歴史作家。立教大学文学部史学科卒。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て現在は作家として活動している。『ざんねんな日本史』、『いっきにわかる! 世界史のミカタ』など著書多数。近著に『呪術の世界史』などがある。

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