芸能界引退を表明したタレント・中居正広さん(52)の女性トラブル問題に、フジテレビ社員が関与していたと報じられたことで、同局が窮地に立たされている。広告主企業の不信感も高まり、CMを「ACジャパン」に差し替える動きも拡大している。広告主企業のひとつだった生活用品メーカー・ライオンは、CM差し替えで生じた損失についてフジテレビに補償を求めていく方針だとも報じられている。はたしてこの騒動の終着点はどうなるのか。大手広告会社出身のネットニュース編集者・中川淳一郎氏が解説する。
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現在ネット上では「フジテレビ、ACのCMだらけ」といった声や、ネットユーザーを揶揄していると受け止められている「決めつけ刑事」というACのCMをフジが流していることを皮肉る意見が、多数書き込まれています。このようにACが話題になるのは2011年の東日本大震災の時以来ではないでしょうか。
はたして今回のフジの件がいつまで続くかといえば、「膿を出した時まで」という判断になるでしょう。中居さんは芸能界引退を表明しましたが、その他にも、7%の株を保有する外資系ファンドが納得した時、社長や幹部が引責辞任をした時、関与したとされるプロデューサー(幹部)が職を解かれた時……など、様々な対応が“世間の空気感”として納得できるものになるまで続くように思えます。
2011年の東日本大震災の時は、3月11日の発生時から3月いっぱいまで、関東ではACのCMだらけになりました。全民放がそうだったため、特にその印象は強かった。しかし、4月になると「そろそろ日常に戻ろう」といった空気感も出てきた。私は当時、ある日用品メーカーの宣伝担当を取材して、「震災後 企業CMはどんな表現・時期に流すべきか宣伝部長苦悩」という記事を執筆しました。そこでは、日常を感じられるCMを流すのにどのような配慮をし、オンエアにこぎつけたか、企業側の苦悩を知ることができました。
同年4月頃は、「そろそろ企業CMを流そう」と各広告主が考えていたようですが、一方でCM再開に向けての“逆チキンレース”と言うべき状況でもありました。当時は、ネットの書き込みでも「ACのCMばかり見ると気分が落ち込む」といったものが多かった。
そこで各社は別企業の宣伝担当者と情報交換をしながら通常CM復活のタイミングを模索したのですが、なかなか始まってくれない。これが“逆チキンレース”です。チキンレースは「辞め時」を競争するものですが、この時は「再開時」について他社を横目で見ながら判断していったのです。