ともに1957年生まれ、知らぬ仲ではない石破茂・首相(左)と野田佳彦・代表(時事通信フォト)
国民生活を直撃する物価高は続いており、コメや野菜の高騰で家計は逼迫している。にもかかわらず、石破政権は“103万円の壁”引き上げをはじめとする減税策に後ろ向きだ。その陰に見え隠れするのが、新川浩嗣・事務次官率いる財務省の思惑である。生活苦に直面する国民の声を聞くどころか、永田町を「増税大連立」へと動かそうとしているのだ──。【前後編の前編】
今国会は石破茂・首相にとって綱渡りだ。少数与党の石破政権は自公だけでは予算案を通せない。だが、協力をアテにしていた国民民主党とは103万円の壁の引き上げをめぐる協議が事実上決裂状態。国民民主側が「取り過ぎた税金を国民に戻すべきだ」とさらなる減税を主張していることに、首相の側近中の側近で「陰の官房長官」と呼ばれる赤沢亮正・経済再生担当相は「税収が増えたらすぐ還元という単純なものではない」(1月14日の会見)と真っ向から否定した。
“これ以上の譲歩はできない”と国民民主との連携を見切ったことを示唆している。
いま石破首相が視線を向けているのは国民民主ではなく、立憲民主党の野田佳彦・代表だ。
年頭のラジオ番組では、「中道政治を目指し、相通じるものがある。長い友人で信頼でき、裏切られたことが一度もない」とべた褒めし、立憲など野党との大連立について「選択肢としてはある」と思わず本音を漏らした。あまりの反響の大きさに、その後、「少数与党なので多くの賛成を得なければいけないということを申し上げた」と発言を修正したが、野田氏を「望ましい提携相手」と見ていることは間違いない。