「空家等対策特別措置法」が改正されどう変わったのか(写真:イメージマート)
団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年を迎えた。将来の日本を見据えると、人口減少、大量相続の発生、住宅需要の激減など国の骨格が変わる人口構成の大変化が控えている。その中で対策が急がれるのが「空き家問題」だ。相続をきっかけに空き家化していく状況に国、自治体はどう対応していこうとしているか。不動産事業プロデューサー、経済・社会問題評論家の牧野知弘氏の新刊『新・空き家問題──2030年に向けての大変化』(祥伝社新書)から対応策の現状について分析する(同書より一部抜粋・再構成)。
目次
「特定空き家」とされる条件
空き家そのものに対する対策も実施されました。2015年に施行されたのが「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称・空家等対策特別措置法)」です。それまで、地域に空き家があってさまざまな問題を引き起こしていても、行政による注意喚起や実効性のある対策は施せませんでした。日本の不動産の私権は強く、役所職員が空き家の敷地に立ち入ることも固定資産税台帳を閲覧して所有者を調査することすらできませんでした。
そこで、「特定空き家」という概念を創設して、特定空き家に認定された空き家については、役所による立ち入りや調査が可能となり、対応策について助言、指導、勧告、命令ができ、命令に従わない場合には行政代執行によって、空き家を撤去できるというようにしたのです。
特定空き家とは、主に次の4つのいずれかの条件を満たすものとされ、地域の有識者などを集めて開催する委員会などで決定するものとしました。
【1】倒壊の恐れが強く、保安上問題があるもの
【2】衛生上有害であるもの
【3】地域において著しく景観を乱すもの
【4】生活環境の保全を図るのに適さない状態のもの
具体的には窓ガラスが破損されたままの状態にある、家屋が著しく傾いている、ゴミ屋敷状態にある、などが判断のポイントとされました。
この法律はこれまで一方的に不動産所有者の権利が守られてきた状況に楔を打ち込む画期的な法律と言えるものでした。ただ、特定空き家に認定する手続きは複雑を極め、有識者を集めた会をどの程度の頻度で開催し、どんな議論を経て決定するかについては自治体によってもバラバラな対応が目立ちました。また手続きが進まないことをいいことに、所有者側もほったらかしの姿勢を続けるなど実効性にも限界がありました。