日本で「空き家」が社会問題化している。過去30年で空き家の数は倍増し、今後も増え続ける見込みだ。では、空き家問題にどのように対処するのが正解なのか。不動産コンサルタント・長嶋修氏の新刊『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館新書)から、空き家問題の現状を踏まえて、親が亡くなったときの実家の扱いについて解説する。
空き家の賃貸化は損をする
日本全国の各地で空き家は増加し続けています。総務省の住宅・土地統計調査によれば、2023年の空き家数は900万戸で、前回調査(2018年)から51万戸増え過去最多となりました。また、総住宅数に占める空き家の割合も2023年は13.8%と過去最高となり、住宅の約7分の1を空き家が占める事態となっています。
1993年の空き家数は448万戸でしたから、この30年で空き家は倍増していることになります。野村総合研究所の予測では、2028年に空き家数は1000万戸を突破。その後1277万戸(2033年)、1554万戸(2038年)と増え続け、2043年には1861万戸で空き家率は25.3%と、なんと「4軒に1軒が空き家」となる未来が待っているとしています。
リフォームやリノベーションをして、賃貸に出すといった選択肢は、経済合理的にはあまりよい結果を生みません。なぜならたいていの場合、割に合わないからです。
一定の築年数が経過していれば、空き家になった後そのまま賃貸に出すのは不可能で、大中小のリフォームが必要になります。例えば建物30坪・4LDKといった典型的な一戸建てについて、屋根や外壁などの外回りを一通りやり替えた場合はざっくり150万~200万円。内装の床・壁・天井の刷新で約200万円、キッチンや給湯器・ユニットバス・トイレ・洗面化粧台といった水回りの更新でおよそ400万~450万円程度かかります。これら全てを行うとなると750万~850万円と、思いのほか莫大な金額になるのです。
部分的にリフォームを行うにしても、そうした投資額を何年で回収できるか計算してみてください。想定賃料はネットで簡単に調べられると思います。近隣で同条件の賃貸住宅の賃料がいくらか見てみましょう。