押さえておきたい法改正のポイント
こうした経緯を踏まえ、国は2023年12月「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」を施行します。この改正のポイントは2015年の空家等対策特別措置法からさらに踏み込んだ内容のものとなり、関連する法改正と併せて次の8点にまとめられます。
【1】管理不全空き家は固定資産税減免措置を不適用
法改正前は空き家を放置していても特定空き家に認定されるまでは特段のペナルティはありませんでした。今回の法改正では、特定空き家に認定される前でも、新設した「管理不全空き家」(特定空き家になる恐れのある空き家)に認定されるとその時点で、住宅用地に適用される固定資産税の減免(敷地200平米以下の小規模住宅用地は固定資産税を6分の1、都市計画税を3分の1、敷地200平米以上の部分の一般住宅用地は同3分の1、同3分の2)が受けられなくなりました。
これまで空き家として家が放置される理由に、この住宅用地の固定資産税の減免があり、家を取り壊して更地にしてしまうと、更地として課税され、固定資産税が6倍になると言われてきました。
今回は管理不全空き家の適用を受けると、家が建っていたとしても、もう減免を受けることができなくなったという意味では、かなり強い措置と言えます。一言付け加えますと、実際には固定資産税は6倍にはなりません。固定資産税には負担調整率があって実際には固定資産税で4.2倍、都市計画税では2.1倍となります。それでも4.2倍になるのは、所有者にとっては大変な税負担の増加。空き家対策の実行を今まで以上に迫られることになるはずです。
【2】特定空き家は即解体撤去対象に
自治体に認定された特定空き家は放置すると倒壊などによって近隣住民や通行人に被害をおよぼす危険があるため、自治体が所有者に代わって空き家を撤去する行政代執行の対象となります。ところがこれまでは代執行に至るまで、「助言、指導、勧告、命令」という一連の手続きを踏む必要があり、実際の取り壊しまでかなりの時間を要しました。
そこで手続きの簡略化を図り、命令なしで行政代執行を行なうことを可能にしました。そして代執行によってかかった解体費用は所有者に請求されることになり、支払わない場合には財産の差し押さえを行なえる強い法律となりました。
【3】相続登記義務化、罰則規定制定
所有者不明土地問題でも指摘された未登記の問題。登記されないことで所有者を特定できない、住所が変更になって連絡がつかないなどの障害を取り除くために相続した不動産について登記が義務化されました。