【7】相続土地の国庫帰属が可能に
相続した土地が「売れない」「貸せない」「自分が使う予定もない」という「負動産状態」に陥っている人に対して、一定の条件のもと、国に引き取ってもらう制度が新設されました。これは空き家所有者にとってかなりの朗報です。
【8】相続放棄における管理義務からの解放
使い道のない、価値のない相続不動産は相続放棄をすればよい、よく耳にするセリフですが、相続人全員が相続放棄をしても、実は残された空き家についての管理責任からは逃れることができません。空き家が荒れ果てて近隣住民に迷惑をかけた場合、相続放棄していても相続人が責任を負わなければなりません。
今回の民法改正では、相続放棄をした場合に管理責任が残るのは放棄した時点で空き家を占有していた人のみが負うものとあらためられました。ただし相続放棄は空き家のみを放棄することはできません。現預金などを含めたすべての相続財産を放棄しなくてはならないことに変わりはありません。
※牧野知弘著『新・空き家問題──2030年に向けての大変化』(祥伝社新書)より、一部抜粋して再構成
【プロフィール】
牧野知弘(まきの・ともひろ)/東京大学経済学部卒業。ボストンコンサルティンググループなどを経て、三井不動産に勤務。その後、J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立。現在は、オラガ総研代表取締役としてホテルなどの不動産事業プロデュースを展開している。著書に『不動産の未来──マイホーム大転換時代に備えよ』(朝日新書)、『負動産地獄──その相続は重荷です』(文春新書)、『家が買えない──高額化する住まい 商品化する暮らし』(ハヤカワ新書)、『2030年の東京』(河合雅司氏との共著)『空き家問題』『なぜマンションは高騰しているのか』(いずれも祥伝社新書)など。