石破茂・首相は「令和の日本列島改造」を推し進めることができるのか(イラスト/井川泰年)
石破茂・首相は年頭記者会見で、「令和の日本列島改造」を強く推し進めると表明。政府機関の地方移転、地方創生交付金の増額など、様々な施策を検討しているという。しかし、経営コンサルタントの大前研一氏は「これでは地方創生は夢のまた夢だろう」と指摘する。なぜ石破首相の政策では地方創生を実現できないのか、大前氏が解説する。
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石破茂首相の政策は“二番煎じ”のオンパレードだ。
施政方針演説で石破首相は、これから我が国は明治維新の中央集権国家体制における「強い日本」、戦後から高度経済成長期の「豊かな日本」に代わる価値観として「楽しい日本」を目指すと表明した。これはかつて作家で経済評論家の堺屋太一氏(元経済企画庁長官)が提唱したことである。
さらに、石破首相は「楽しい日本」を実現するための政策の核心は「地方創生2.0」で、これを「令和の日本列島改造」として強力に推し進めるとぶち上げた。しかし、これも田中角栄元首相の「日本列島改造論」、大平正芳元首相の「田園都市構想」、竹下登元首相の「ふるさと創生」を基にした(本人もそう言っているが)パッチワークでしかない。
そもそも石破首相は10年前、第2次安倍晋三政権で初代地方創生相に就任し、「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げた。当時、本連載では「交付金をバラ撒くだけの地方創生は、安倍政権が万策尽きた証左である」と批判したが、実際、何の成果もなかった。
今回も石破首相は内閣官房に「新しい地方経済・生活環境創生本部」を設置し、その会議で「今度失敗すると大変なことになります」と述べた。そして地方創生交付金は従来の1000億円では「全然足りない」として2025年度予算案で2倍の2000億円を計上するという。2024年度補正予算にも1000億円を計上しているので、2025年度予算案が成立すれば合計3000億円になる。
さらに石破首相は年頭記者会見で、「令和の日本列島改造」を進めるために、2026年度中の創設を目指す「防災庁」を含む政府機関の地方移転、国内最適立地を強力に推進すると表明した。しかし、これまでに文化庁が京都、消費者庁が徳島に移転したが、それが地方創生につながったという話は寡聞にして知らない。
つまり、石破首相は地方創生が仕掛けや仕組み、意識、人材などの問題ではなくカネの問題であり、交付金を増やしてバラ撒き、中央省庁を地方に移転すれば実現できると考えているわけだ。逆に言えば、前回なぜ失敗したのか、これまでなぜ地方創生が進んでいないのかという根本的な原因がわかっていないし、自分のアイデアを全く持っていないのである。これでは地方創生は夢のまた夢だろう。