ただひとつだけの心配事
森永さんは自身の経済事情についても包み隠さず告白した。
「がん発覚と同時に株や投資信託、外国債券などの整理も始めた。金融資産は買うより売るほうが100倍難しく、特に昨年は上げ相場が続いたので決断が鈍った。(中略)それでも売却したタイミングは僥倖で、手元には3千数百万円の売却益が転がり込んだ」(2025年2月7日号)
人生はお金ではない、としつつ、現実的な視点も忘れなかった。森永さんは自らの闘病模様を克明に明かし、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」や自由診療の免疫療法をはじめ、諸費用を合わせて毎月の医療費が150万円を超えていることを告白。資産整理で得たお金で闘病が続けられている事実を受けて、生前から預金・証券口座をリスト化しておくことや、通帳の保管場所の確認、銀行口座の一本化など実用的なアドバイスを発信した。
こうして死に向き合い続けた森永さんにも、ただひとつだけ心配事があったという。それは42年間連れ添った愛妻のこと。
「私の死後、妻が1日も早く1人で生きられる状況を作るため、心を鬼にして彼女と距離を置き、事務作業を丸投げするよう心がけた。私が妻に嫌われれば、私がいなくなっても妻はすぐに立ち直れると思ったのだ。だが正直、これまで私に尽くしてくれた妻を冷淡に扱うことは難しく、この身辺整理だけは上手くいっていない」
本質を見抜く知性と教養、そして溢れる人間味を併せ持つ、2人といない経済学者だった。森永さんの遺した言葉から学ぶべきことは山ほどある。
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現在、マネーポストWEBでは、関連記事《【【独占手記・全文公開】森永卓郎氏、がんステージIV「余命4か月」宣告でも精力的に生きられる秘訣 お金、健康、人間関係の整理…常識に囚われない心得を明かす》にて、森永さんの手記を全文公開している。資産整理、治療の様子、気の持ちよう、そして最愛の家族も含めた人間関係についてまで、がん宣告されてから亡くなる直前まで、森永さんがたどりついた考え方を詳細にレポートしている。
※週刊ポスト2025年2月14・21日号