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田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国でDeepSeekをAPI連携する企業が続出、「第2・第3のDeepSeek」誕生の可能性はあるのか?国家がイノベーション推進を後押しする資金提供システム

人材育成の面でも中国の大学レベルは世界的に高い評価

 公開のしやすさ、資金調達の規模といった点で多層に渡る資本市場が用意されており、それらの市場が機能することで、多くの新しいニーズに対応する新しい企業が生まれている。2月7日現在、創業板銘柄は1369社、科創板は585社、北京証券取引所上場企業数は264社に及ぶ。創業によって大きな成功を得ようとする大量の若者がほとんど市場が存在しないような業界目掛けて飛び込み、その中で過酷な生き残り競争を繰り広げることで、新しい市場が開け、そこから競争力の高い企業が生まれる。

 イノベーションを牽引する人材についてだが、その育成機関として米国の大学が大きな役割を果たしている。そこでは大量の中国人留学生が研究活動を行っており、彼らの活躍が米国のイノベーションを支えているといった側面がある。

 国家予算を投じて海外との積極的な共同研究を行い、米国で博士号を取得した優秀な学者がその能力を中国で発揮することで、今や中国の一流大学はアジアでもっとも高いレベルにあると言っていい。2024年10月に発表されたイギリス・タイムズによる高等教育情報誌によれば1~11位まではイギリス、アメリカ、スイスの大学が並ぶが、12位に清華大学、13位に北京大学がランクされている。上位100校には7校の中国の大学がランクインしており、そのほかに香港の大学が5校含まれる。日本については東京大学が28位、京都大学が55位に入っているだけだ。中国に対する評価の厳しいイギリスの機関でさえ今や、中国の大学のレベルがイギリス、アメリカに次ぐ水準であることを示している。

 中国の不動産不況は深刻であり、日本のバブル崩壊時と酷似しているといった見方もあるが、中国では戦略的新興産業の発展を通じ、社会全体の需要構造を変える動きが水面下で加速しており、その点がバブル崩壊後の日本とは決定的に異なる。

 中国の経済システムについて、硬直的で中央集権的であるとか、官僚主義的な非効率、競争欠如の罠に陥っているとかいった見方も根強いが、少なくともイノベーションの先端では、そうしたイメージとはかけ離れている。

 中国はスマホの社会導入、新エネルギー、電気自動車の開発などの点で、世界の最先端にあるといった実績もある。

 DeepSeek自体は未上場企業であり、国内の大学で教育を受けた若い経営陣、従業員たちで構成される企業だが、その成長の仕組み、徹底した能力主義といった経営スタイルは米国流そのものだ。こうしたスタイルの企業は未上場、上場を問わず、無数に存在する。今後、イノベーションにおいて、第2、第3のDeepSeekが生まれる可能性は充分あると覚悟しておいた方が良いだろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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