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名医が教える生活習慣病対策

【生活習慣病と脳卒中の関係】脳梗塞は高齢者だけの病気ではない 治療は「時間が勝負」で発症してからの時間が短いほど治療の選択肢が広がる【専門医が解説】

「脳梗塞は高齢者だけが発症する病気ではない」と語る杉村勇輔医師

「脳梗塞は高齢者だけが発症する病気ではない」と語る杉村勇輔医師

 脳血管疾患(脳卒中)の中でも、近年増加傾向にあるのが脳梗塞。急性期の脳梗塞治療は、発症後からの時間が短いほど治療の選択肢が広がり予後もよい。24時間以内ならカテーテルによる治療が有効だという──。シリーズ「名医が教える生活習慣病対策」、杉村病院・杉村勇輔理事長が、生活習慣病と脳卒中の関係について解説する。【生活習慣病と脳卒中の関係・前編】

高齢者だけが発症する病気ではない

 日本人の死因原因の第4位である脳血管疾患(=脳卒中)は、2022年の統計で年間約11万人が亡くなっています。脳卒中は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に大きく分類されていますが、近年増加しているのが脳梗塞です。

近年、脳血管疾患(=脳卒中)のなかでも脳梗塞が増加している

近年、脳血管疾患(=脳卒中)のなかでも脳梗塞が増加している

 脳梗塞は、脳の血管が閉塞してその先に血液が届かなくなる病気です。血流の消失により一度死滅した脳細胞は、二度と再生することはありません。脳細胞が死滅すると、身体に障害が残ったり寝たきりになるだけでなく、最悪の場合は死に至ることもあります。

 脳梗塞のおもな原因は不整脈や動脈硬化のほか、喫煙や過度の飲酒といった生活習慣や、ストレスなどの環境要因が加わり発症します。近年は食生活の欧米化により、若い世代でも高血圧や糖尿病、脂質異常症などが原因で発症するケースが増えています。

 私の病院には年間600~700件の脳卒中患者が入院されますが、その中には30代後半から40代の若い患者も数例含まれています。脳梗塞は高齢者だけが発症する病気ではないのです。

 脳梗塞は大きく分けて「アテローム血栓性脳梗塞」「ラクナ梗塞」「心原性脳塞栓症」の3つの病型があります。アテローム血栓性脳梗塞は、脳内の太い血管が動脈硬化を起こして詰まるのが特徴です。ラクナ梗塞は脳内の太い血管から枝分かれした細い血管が詰まる病型で、細い血管が破れると脳出血に繋がります。2つの病型とも、高血圧、糖尿病などから続く動脈硬化によって発症します。

 最後の心原性脳塞栓症は、心房細動(=不整脈)によって心臓内の血液の流れが不規則になることで血の塊(=血栓)が生じ、それが剥がれて血流に乗り、脳に到達して脳の血管を詰まらせます。なお、3つの病型の発症頻度は約30%ずつとほぼ同じ割合です。

3つのタイプの病態発生頻度は約30%ずつでほぼ同じ割合(イラスト/タナカデザイン)

3つのタイプの病態発生頻度は約30%ずつでほぼ同じ割合(イラスト/タナカデザイン)

 脳梗塞には、「顔が歪んでいる」「片側の口角が下がっている」「呂律が回らない」「片方の手足のしびれ」など、特徴的な症状があります。重症になると「反応がない」「寝たまま起きてこない」「同じ方向を向いたまま動かない」といった症状が認められるので、こうした症状があればすぐに救急車を呼ぶ必要があります。

脳梗塞には特徴的な症状がある(イラスト/タナカデザイン)

脳梗塞には特徴的な症状がある(イラスト/タナカデザイン)

 脳梗塞の疑いがある症例については、搬送後すぐに血液検査、心電図検査、脳のCTやMRIによる画像検査、胸腹部血管の障害などを調べ、他の病気の可能性を除外した上で診断されます。加えて、現在服用している薬や症状の重篤度などを総合的に判断して治療戦略が立てられることになります。

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