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名医が教える生活習慣病対策

【生活習慣病と脳卒中の関係】脳梗塞は高齢者だけの病気ではない 治療は「時間が勝負」で発症してからの時間が短いほど治療の選択肢が広がる【専門医が解説】

脳梗塞治療は時間が勝負

 急性期の脳梗塞治療は、発症してからの時間が短いほど治療の選択肢が広がり、予後も良いことが知られています。画像診断で太い血管が詰まっても、脳細胞が完全に死滅するのではなく前段階で“気絶”している程度であれば、できるだけ早く血管の詰まりを解消する治療を行ないます。

 また、症状の発見から4.5時間以内であれば、「t-PA(アルテプラーゼ)血栓溶解療法」による治療が保険適応になっています。点滴で溶解薬を入れることで血栓を溶かす治療ですが、血液をサラサラにする薬を服用していたり、以前脳出血を起こしたことがあるというケースは、治療をすることで脳出血のリスクが高くなるために行なわないこともあります。

 発症から24時間以内であればカテーテルによる治療を行なうこともあります。以前であれば血管にアプローチする場合は開頭手術でしたが、現在は太ももの動脈からカテーテルを血栓が詰まっている箇所まで挿入し治療します。

 治療のデバイスは2種類あり、血栓をステントレトリーバーで絡め取る方法と、血栓を吸引して血流を確保する方法です。ステントレトリーバーにするか吸引にするかは、血栓が詰まっている場所や形状、重症度などで決めますが、症例によっては両方を組み合わせて行なうこともあります。

 カテーテル治療は数多くのエビデンスが国内外から報告されており、脳卒中ガイドラインでは適応と判断された患者に対する治療として強く勧められるグレードAになっています。t-PA血栓溶解療法とカテーテル治療を同時に行なうこともあり、2つの治療が適応であれば、両方を実施したほうが予後が良好という報告があります。

 残念ながらt-PA血栓溶解療法やカテーテル治療の適応ではない場合は、生活習慣病の治療やt-PA以外で血液をサラサラにする治療、脳を保護する点滴といった標準的な治療をすると同時に、早い時期からリハビリテーションも併せて行ないます。

閉塞した脳血管の画像

閉塞した脳血管の画像

カテーテル治療により血流が回復した画像

カテーテル治療により血流が回復した画像

生活習慣病と脳卒中の関係・後編に続く

【プロフィール】
杉村勇輔(すぎむら・ゆうすけ)/医療法人杉村会杉村病院理事長兼脳神経内科医長。2010年東邦大学医学部卒業。板橋中央総合病院、東京都済生会中央病院、熊本赤十字病院、熊本大学医学部附属病院脳神経内科特任助教を経て、2019年医療法人杉村会杉村病院副理事長兼脳神経内科医長に就任。熊本大学医学部医学科臨床教授、東北文化学園大学大学院臨床教授を歴任し、2023年同病院理事長に就任。2024年より熊本大学医学部保健学臨床准教授、2025年より熊本大学医学部医学科臨床教授(就任予定)。

取材・文/岩城レイ子

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