脳卒中の予防に繋がる頸動脈エコー検査
近年、人間ドックで頸動脈エコーを標準プランにしているケースが増えています。頸動脈エコーは、首の左右にある血管の中で、脳に向かう内頸動脈の肥厚やプラークを調べる検査です。全身の血管は繋がっているため、頸動脈に肥厚やプラークがあるということは全身で動脈硬化が進行している可能性を示します。もしかすると、心臓の冠動脈の狭窄や下肢動脈閉塞が進行しているかもしれないのです。
さらに、内頸動脈そのものがプラークによって狭窄していて、脳への血流が減少していることもあります。内頸動脈狭窄症という病気で、重症の場合は治療が必要になります。内頸動脈狭窄症の治療方法は2つ。以前標準的に行なわれていたのは、全身麻酔で首の横を切開して血管を露出させ、プラークを除去する方法です。現在は、この治療方法に加えてカテーテルによる治療が行なわれています。
頸動脈の上部にプラークがあり、動脈硬化が進行している可能性がある
プラークのない正常な頸動脈
足、もしくは上腕の肘からカテーテルを挿入し、頸動脈の狭くなった箇所に到達させ、先端についてバルーン(=風船)で血管を広げます。その後、金属製のステントで内側からプラークを血管壁に圧着させることで血流を回復させます。頸動脈ステント留置術は局所麻酔で実施するため、手術時間が短く、傷も小さいことから、回復までの時間短縮が可能になります。
頸動脈の狭窄が治療する程でない場合でも、40歳を過ぎたら1年もしくは2年に一度、脳ドックを受けた方が良いでしょう。ごく小さな脳梗塞の痕跡が見つかるケースがあり、痕跡があるということは再発リスクが高いと考えることができます。
仮に小さな脳梗塞の痕跡が見つかった場合、生活習慣病や不整脈があればしっかりと治療して、動脈硬化の進行を抑制する必要があります。加えて、禁煙、過度の飲酒をやめるといった生活習慣の改善で、動脈硬化の抑制と脳血管イベント発症リスクを避けることが重要になります。
【プロフィール】
杉村勇輔(すぎむら・ゆうすけ)/医療法人杉村会杉村病院理事長兼脳神経内科医長。2010年東邦大学医学部卒業。板橋中央総合病院、東京都済生会中央病院、熊本赤十字病院、熊本大学医学部附属病院脳神経内科特任助教を経て、2019年医療法人杉村会杉村病院副理事長兼脳神経内科医長に就任。熊本大学医学部医学科臨床教授、東北文化学園大学大学院臨床教授を歴任し、2023年同病院理事長に就任。2024年より熊本大学医学部保健学臨床准教授、2025年より熊本大学医学部医学科臨床教授(就任予定)。
取材・文/岩城レイ子