ただし、今後も日鉄が生き残っていくためにはUSスチールだけでなく、クリーブランド・クリフスやニューコアも含めた鉄鋼業界の「日米大連合」を模索すべきではないか。それはアメリカの独占禁止法に抵触するだろうが、グローバル時代のボーダレス経済の中では、国内だけを対象にしている独禁法の考え方を転換しなければならない。もはやアメリカの鉄鋼業界は瀕死状態だから、独禁法の対象外にすべきなのである。
具体的には、世界トップ企業の規模が自国の最大企業の規模の5倍を超えたら、独禁法の対象から除外する。鉄鋼業の場合、宝武鋼鉄集団の粗鋼生産量(1億3077万トン)は、アメリカ最大のニューコア(2120万トン)の6倍以上である。そういう時は国内企業すべてのM&A(合併・買収)を無条件に認めるのだ。
鉄鋼以外の業界でも、これからさらに強大化していくと予想される中国企業に対抗する方策は、それしかないと思うのである。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2025-26』(プレジデント社)、『新版 第4の波』(小学館新書)など著書多数。
※週刊ポスト2025年2月28日・3月7日号
『新版 第4の波』(小学館親書)