トイレに行く時は申告制という職場もあるとか(イメージ)
あと意外と多かったのが、生理現象・体調管理に関するものでした。「トイレに行く時は挙手して『大』か『小』を申告しなくてはならない」というルールにはたまげた。これも効率化の一種で、すぐに帰ってくるかどうかを同僚が把握するために作られたルールでしょうが、言うのが恥ずかしい人もいるはずです。さらには「熱中症対策で摂取した水分量を昼休憩時と退社時に申告する」というルールもありました。「生理休暇を誰かが取ろうとした場合は、(調整のために)女性従業員全員の生理の日を確認する」というのは、プライバシーの侵害です。
このままでは日本企業の弱体化にも繋がりかねない
しかし、バカルールのバカルールたるゆえんは、どう考えても意味がないのに、皆で頑張って我慢比べをする様です。「暑くても寒くてもなぜか外で朝礼をする」、「残業をするなら上司に8時間前に申告する」、「シール式の切手は使ってはいけない」、「社外メールをするたびに報告書を提出する」……など、どう考えても生産性が上がるルールではない。
さらには、「昭和か!」と言いたくなるルールがコレ。
「バレンタインに女性社員全員からお金を徴収し、男性社員全員にチョコを贈るルールというか慣習がある。なんで好きでもない(むしろ嫌いな)男のために、お金と時間を使わなければならないのか?」
様々な職場のバカルールを見てきましたが、問題は、このルールを作る人がこのルールこそ会社をより良くすると考えていたであろう点です。あと、冒頭に登場した建設会社のA氏が言っていたことは日本企業の弱体化にも繋がりそうな話でした。何しろ自己保身と責任回避のため、非合理的なことをしているのですから。
「ルールを作る人は、何か問題が起きた時に『私はこのルールを守るよう伝えていましたよね』と言いたいんでしょうね。そうすることによって、ミスをした人にすべて責任を押し付けることができる。あと、ルールを作る総務部や管理職は、『ちゃんと仕事をしています』というアピールのためにルールを作る面もあります。全部自分のためなんです。決して従業員のことを考えているわけではありません」(A氏)
もう、こうなったらデキる管理職・総務部は従業員から「これはいらないと思うルール・風習・習慣を教えてください」と匿名で社内から募集してみてはいかがでしょうか。案外そうするとムダが見えてきて、仕事の効率が上がるかもしれません。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。