企業で働く人たちには様々な「肩書」がある。「代表取締役社長」「常務取締役」「CEO」「部長」「課長」「主任」「ディレクター」「プロデューサー」など様々だ。中には「一体なんじゃこりゃ?」といった肩書も存在する。これまで数万枚の名刺交換をしてきたネットニュース編集者・中川淳一郎氏が、今もなお、種類が増え続ける「肩書」について物申す。
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私が1997年に広告会社・博報堂に入り、企業のPRをやる部署「CC局(コーポレートコミュニケーション局)」に配属された時、肩書は「CCプラナー」でした。「プラナー」はPlannerのことで、「コーポレートコミュニケーション≒広報活動」の企画プランニング業務をやる人材であることは分かりました。
しかし、同じ広告会社でも、電通の場合は「プランナー」と表記している。この時に「肩書」の面白さを知ったのです。会社によって表記が違うほか、その組織の事情を従業員の肩書が表しているのだ、ということに注目するようになりました。
そこから業務で初めて知り合う方々と名刺交換をするたびに肩書を見るようになったのですが、これまでの人生で一番ぶっ飛んだのが、イベント業務を行う大手印刷会社の人の名刺でした。
「課長補佐主任心得」
当時私は24歳の「CCプラナー」だったのですが、30代後半と思われるその男性は「課長補佐主任心得」の名刺を出してきた。同氏の上司の「課長」とはすでにその前に名刺交換を済ませていたのですが、「課長補佐主任心得」はまったく意味が分からなかった。一体どれだけエラいのか分からない……。
この時、同社の他の人とも名刺交換をしたのですが、その中には「課長」「主任」もいました。となると、恐らくこの課長補佐主任心得氏は、「課長」とも「主任」とも立場が違うはず。とはいえ、この課長補佐主任心得氏については、そのエラさがまったく分からない。下請けの私としては、「誰がキーマンなのかせめて分かるようにしてくれ!」と思うわけです。
なにしろ、下請け業者は常に「キーマン」を見つけることを考えて仕事をしています。その人に気に入られる施策を提案することで、仕事を獲得できるし、円滑に業務を進められる。ところが、この仕事においては、突然の不意打ちである課長補佐主任心得氏の登場により、まったく分からなくなったのです!
「課長」を重視すべきなのか、それとも現場を仕切る(かもしれない?)「課長補佐主任心得」を重視して仕事を進めればいいのだろうか……。「補佐」と「心得」の違いは何なのか? だから上司に「誰がキーマンですか?」と聞いたら、「もう、いいよ。誰でもいいから相手が言うことを最大限尊重してやれ」なんて言われる始末。