監視委が行なう「取引審査」の件数は急増
昨年12月には東京地検特捜部が監視委の告発を受け、事前に知り得たTOB情報をもとに不正取引したとして、金融庁に出向中の元裁判官と東京証券取引所の元社員を在宅起訴した。 監視委で調査を担当した経験がある公認会計士の野村宜弘氏はこう解説する。
「東証の元社員などの事例のように、監視委が刑事罰を念頭に置いて告発するには多くの時間とコストが必要なため、件数はそこまで多くありません。ただ、インサイダー取引が疑われる不審情報をもとに監視委が行なう『取引審査』の件数は急増しています」
取引審査の件数は2023年度に1147件を数え、2019年度の976件から2割弱増加した。 急増の理由について野村氏はこう見る。
「近年、M&Aなどを目的にTOBの件数自体が増えていることが背景にあります。また、TOBは企業の役員だけでなくアドバイザー、監査法人など事前に情報を知る関係者が多くなり、問題が起きやすいのでしょう。 摘発に至るケースは1回の取引にとどまらず、反復継続していることが多いとされます。違法行為が疑われても、監視委がすぐ動くわけではありません。それゆえ、バレていないと思って取引を繰り返したり、取引金額が大きくなって発覚することが多いとされます」
“確実に儲かる”という禁断の手段の誘惑に負けてしまうわけだ。
ただ、そうしたTOBに絡んだ情報を活用しながら合法的に儲ける方法もある。関連記事《【億り人になった人も】「TOB情報」で合法的に利益を狙う方法 情報公開後にさらに上昇が見込める銘柄の見分け方と購入のタイミング》では、そうした投資手法について解説している。
※週刊ポスト2025年2月28日・3月7日号