備蓄米放出でリスクは高まり危機は先送りされた
備蓄米制度とは、10年に一度の不作にも供給できる量100万トンを備蓄する制度だ。当然、放出にはリスクがあり、今年がその10年に一度の不作の年であれば、備蓄米が不足することになる。さらに、今年が平年並みの作付けであったとしても、今回放出した21万トン分は多めに備蓄する必要があることから、根本的な解決にはならないことは誰の目にも明らかだ。
むしろ、現在の状況は、リスクを増やし、かつ、危機を先送りにしたにすぎない。短期的には、今年の豊作を祈りつつ、飼料用や米粉として作られたものを自由に食糧用に振り分けることができる規制緩和が必要であろう。
食糧危機を克服するために、中長期的に、政府がすべきことは、農家により大きな自由を持たせることだ。日本の気候に合わない作物を補助金でつくらせたり、強引にお米の生産を増やしたり、減らしたりすることが、農家の活力を落としていることに気づいた方が良い。
平時には、土地や気候にあった作物を農家に自由につくらせることで農作物の競争力を高め、大量の輸出を実現しておき、危機時においてはその作物を国内に向けるような仕組みをつくっておくべきだろう。高自給率の国では、農作物の輸出が大きな役割を果たしているケースが多い。必要なのは、農水省によるお米の保護政策ではなく、農水省の解体と出直しではないか。
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