人体に有害だとして世界的に規制が進む「トランス脂肪酸」を含む食パン・菓子パンを実名リスト化した本誌・週刊ポスト前号の特集には、読者からの問い合わせが殺到した。「一食でどれだけのトランス脂肪酸を摂取したか正確に知ることはできないか」──。
その手がかりとなるのが、実際に店頭で売られている1包装当たりの含有量である。その上位119商品を公開するとともに、この問題について改めて専門家やメーカーなどに見解を聞いた。【全3回の第1回】
日本では「含有量」の規制も「表示義務」も定められていない
食品に含まれる「トランス脂肪酸」は、製造の過程で油を加工することによって発生する。食用油の研究を専門とする慶應義塾大学医学部の井上浩義教授が語る。
「バターなどの動物性の油よりも安価な植物油を使用する際、品質を保って食感をよくするために、油に水素を添加して固形の油脂にします。この油は『部分水素添加油脂』と呼ばれ、心血管疾患リスクを高めるトランス脂肪酸を生み出します」
掲載の表にまとめた通り、トランス脂肪酸は大量摂取により心筋梗塞や狭心症などの心疾患リスクを高めることが明らかになっているほか、がん、認知症、脳卒中などの発症リスクについても研究が進められている。WHO(世界保健機関)は2018年、トランス脂肪酸の食品への含有を「2023年までに全廃する」との目標を掲げ、その勧告に応じて世界46か国が規制を導入した(2022年末時点)。
だが、日本にはその規制がない。前出・井上教授が問題視するのは、日本では「含有量」の規制だけでなく、食品パッケージへの「表示義務」も定められていないことだ。
「消費者がパッケージの食品表示ラベルを確認して、商品購入時の選択材料にできる環境がないことが問題です」