男性のDV被害は増加の一途(警視庁・令和5年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について)より
「男なら」という精神的な暴力も
DVは殴る・蹴るに代表される身体的なものだけでなく、性的暴力、生活費を与えない・金銭の自由を与えないといった経済的暴力など、様々な種類が存在する。
そしてそのうちのひとつに、精神的暴力がある。埼玉県在住のBさん(20代男性)は、身体的暴力と精神的暴力の両方に苦しめられた。当時同棲していた彼女は「男なら~」と枕詞を置いて、自身の価値観を押し付けてきたと、Bさんが振り返る。
「僕が何か失敗すると彼女が思い切り叩いてくるんです。たとえば電気をつけたままうたた寝をすると『ちゃんと消して!』と言って叩かれる、とかですね。手でペチン、のようなかわいいものじゃないですよ。布団たたきや木刀で叩かれるんです。痛いのでやめるように言っても『男ならこれくらい我慢しろ』と、聞く耳を持ちません」(Bさん)
同棲する前は、こうした暴力はなかったが、同じ空間にいることが長くなるにつれエスカレートしていったようだ。
「次第に何をするのにも暴力的になりました。僕が会社で失敗をして落ち込んでいると、『男ならうじうじするな!』と背中を思い切り叩く。『男らしくしなさい』だとか『女みたいになよなよ悩まない』とか言われるという精神的な暴力も加わっているので二重に辛かったんです。この生活が耐えられなくなって別れました。誰かに相談できていれば、なにか違った結末があったのかもしれません」(同前)
話を聞いた被害男性たちに共通していたのは、被害にあっても相手に強く出られず、耐えるばかりでどこにも相談できなかった姿だ。見えない被害者たちが声を上げることができる社会づくりが求められる。