テスラの動向にも注目が集まる(イーロン・マスク氏/時事通信フォト)
ホンダとの「経営統合協議」の打ち切りが発表され、“パートナー”を失った日産をめぐる新たな動きが出てきた。日産はホンダ以外を選ぶのか、あるいはどこかに買収されるのか──。自動車業界に精通するジャーナリスト・井上久男氏がレポートする。【全3回の第1回】
菅義偉元首相やテスラ元社外取締役の水野弘道氏らを含むグループが米テスラによる日産自動車への出資計画を策定している──。2月21日、英フィナンシャル・タイムズがこんな衝撃的なニュースを報じ、英ロイターや米ブルームバーグもこの報道を追いかけた。
しかし、水野氏は自身のX(旧ツイッター)で、「報道されているような内容には一切関与していない」などとする否定のコメントを発信した。
実は筆者も昨年12月、「テスラが日産の米国工場を取得しようとしている」との情報をキャッチしたが、その時点では確証は得られなかった。しかし、年が明けてすぐ、ある日産元役員からこんな話が入った。
「通信業界に長くいたA氏から連絡があり『日産の再生計画を手伝ってほしい』と言われたが、断わった。A氏の背後には米国企業がいて、別の元役員も関係している可能性がある」
それで再び取材に動くと、テスラとA氏の動きは関係し合っているように感じた。そして「A氏は、総務相経験者である菅氏と近い」と指摘する企業幹部もいた。
テスラと日産の関係について取材を進めていくと、日産の一部の社外取締役やA氏、安倍・菅両政権時代の官邸関係者も動いていることが分かったが、本当にテスラが日産に出資する計画があるのか、そこに元首相までが本当に関係しているのかまでは掴めなかった。
そして、2月8日の日米首脳会談でトランプ大統領が、USスチールの買収問題に絡んで、日本製鉄のことを「日産」と3回言い間違えたため、ホワイトハウスが訂正したことも報道された。
テスラのイーロン・マスクCEOはトランプ氏の側近の一人。大統領の脳裏のどこかに日産の名前があるのだろうか、筆者は勘繰ってしまった。