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日銀が“地ならし”を進める「追加利上げ」に要警戒 日米のネガティブ要因が重なれば昨夏の4000円超を上回る「日経平均大暴落」の悪夢も

日銀の「追加利上げ」にも要警戒(植田和男・日銀総裁)

日銀の「追加利上げ」にも要警戒(植田和男・日銀総裁)

 4万円台には届かないものの、日経平均株価は堅調さを保っているように見える。しかし、気づかぬうちに「危機」が足下まで迫り、市場では不穏な空気が流れ始めた。元みずほ総合研究所主席研究員で多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏は、好調と目されてきた米国経済に異変が見え始めたと指摘する。

「米国では商業用不動産の価格下落が進み、低所得者層のクレジットカードの延滞率が上がっている。ほかにも、寒波や山火事など天災による個人消費の落ち込みも見られます」

 そこに追い打ちをかけるのが「トランプ関税」だ。こころトレード研究所所長の坂本慎太郎氏が言う。

「過激な関税強化に踏み切れば、輸入品の価格上昇に伴って米国内のインフレが加速するのは必至です。米国景気が悪化すれば、世界経済に影響が広がる。米国発の株価急落リスクは常に意識しておく必要があります」

売りが売りを呼ぶパニック

 そうしたリスクが囁かれるなかで気がかりなのは、株高をもたらしてきた金融緩和路線を転換する日銀の「追加利上げ」だ。物価高を抑える効果などを期待して実施される利上げだが、タイミングを誤れば景気に冷や水を浴びせる危険と隣り合わせになる。政策決定を担う日銀の審議委員の顔触れも、金融緩和や財政出動に積極的な「リフレ派」の影は薄まり、利上げに前向きな発言が目立つ。

「審議委員の高田創氏が講演で『利上げで一段のギアシフトを進める局面にある』と強調するなど、日銀が追加利上げの“地ならし”を進めているのは間違いない」(真壁氏)

 賃上げや個人消費の回復がおぼつかないなか、日銀が追加利上げを急げば、住宅ローンや企業の借入金返済の金利負担が増すなど、景気回復の足を引っ張る結果となりかねない。

 振り返れば、昨年8月5日に日経平均が前日比4451円安の史上最大の暴落に見舞われたのも、その直前に日銀がサプライズで利上げを発表したことがきっかけだった。こころトレード研究所所長の坂本慎太郎氏が言う。

「円安を追い風にして外国人投資家が日本株を買い越していて、企業業績も好調と右肩上がりの状況下で、多くの投資家が売り時を計りかねていた矢先でした。植田和男・日銀総裁が7月31日の政策決定会合で利上げに踏み切った“植田ショック”を機に株価が下がり始めると、大きく下がる前にどうにか利益確定しようとパニック売りが始まった。売りが売りを呼ぶ一方通行の展開で大暴落したのです」

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