トランプ氏とマスク氏のタッグがアメリカをどう変えるか(CNP/時事通信フォト)
日々繰り出されるトランプ米大統領の政策に世界中が振り回されている。今回の第2次政権は、イーロン・マスク氏ら経済界のビッグ・テック人材が大きな影響力を持っているのが特徴だ。ジャーナリストの池上彰氏と作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が、今後のトランプ政権の行方を読み解く。
強力なデジタル政府が誕生する可能性
池上:トランプ政権の今後を占ううえで、イーロン・マスクさんが主導する政府効率化省(DOGE)の動きも気になります。AIを自在に駆使する若いテクノリバタリアンたちを率いて、財務省の機密データにアクセスしたり、乱暴なやり方で国際開発局(USAID)を閉鎖したりと物議を醸しています。しかし、混乱の末に最小限の官僚だけで社会を管理する強力なデジタル政府が誕生する可能性もある。それは恐ろしいとも思うんです。
佐藤:その実験に成功したのがウクライナですよね。マスクはあの国に通信衛星スターリンクのサービスを提供し、実績も重ねています。
池上:アメリカでは納税者データを引っ張り出そうとしましたし、よもや有権者登録の際に記入する支持政党の情報なんかと紐付けされたら、どの職員が民主党支持か権力側が把握できる。中国以上の国民監視国家ですよ。
佐藤:でも、政治にさえ関心をもたなければ、安楽な生活はできる(笑)。
池上:全くその通りですが(笑)。トランプさんはLGBTQを否定するなどキリスト教保守派の支持を受けていますが、マスクさんはAIで政府の再編成に挑んでいる。宗教とテックの複合国家がつくられるのかと警戒しています。
一方で、「共同大統領」として振る舞うマスクさんに対する暗闘も起きています。2026年の中間選挙まで2人の関係が持つかどうかも注目です。