ところが、AI学習を行なうコンピューターが情報解析するために録音する場合、声優の声をマネて生成させるなどの利用目的がある場合以外は許可不要です。利用者の指示で生成AIの作成する音が声優の声に似ていなければ、実演家の権利侵害にはなりませんが、ある声優を彷彿させるような音声として作成されると問題です。
この音声は録音ではないため、著作隣接権の侵害になるか疑問ですが、元来人の声というのは、その人物の人格象徴の一つといえます。ある声優に人気があり、その音を商業的に利用できる価値がある場合には「パブリシティ権」で保護されるべきだと考えます。
学習時に顧客吸引力のある声優の声をデータに取り込んでいた場合で、当該声優の声類似の音を生成AIにして販売や商業的に使うと、パブリシティ権の侵害になり、利用者の生成AI使用の差止めを求め、もし、利用者において生成AIが当該声優の声を学習していたことを承知していたり、知らなかったことに過失があれば、損害賠償の請求も可能と思います。
ただ、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」では、なお議論継続が必要としています。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年3月14日号