書面でのやり取りも大切だ(イメージ)
働き方改革が叫ばれて久しい昨今、心身両面のケアに対応した休職制度も整備されつつある。働きやすい社会が形成されるのは好ましいことだが、反面、休職制度に関するトラブルも増えているようだ。
たとえばメンタルヘルスケアによる療養期間が必要なものの、復職の目処が立たないという状況。一方的に解雇するわけにもいかず、経営者が途方に暮れてしまうケースもあるという。こうした休職トラブル回避のために、経営者はどのように対応をするべきか。労働問題に詳しい弁護士・島田直行氏の著書『知識ゼロからの問題社員のトラブル解決 円満退職のすすめ方』(幻冬舎)より、一部抜粋して再構成。【全3回の第3回】
「休職制度」の利用には休職命令を書面でだす必要
【事例紹介】
サービス業を営むA社では、現場リーダーの男性から「うつ病でしばらく休む」と電話がありました。本人の希望で年次有給休暇を利用していましたが、残日数が少なくなったため、連絡するも音沙汰がありません。経営者は解雇するわけにもいかず、途方に暮れてしまいました。
紹介事例のようなケースは中小企業で目にすることのひとつです。
うつ病の場合には、療養が数ヵ月など長期にわたります。そのため通常は「欠勤」ではなく「休職制度」が利用されます。休職制度は、労働者の個人的事情で長期間就労できない場合に、雇用関係を維持したまま一定期間にわたり就労義務を免除するものです。
「体調不良で働けなくなった。それなら解雇」というのはあまりにも労働者にとって過酷です。そこで、解雇を猶予するものとして休職制度があります。
休職は労働者が一方的に「休職制度を利用します」といって始まるわけではありません。あくまで会社が「現状で勤務は難しい」と判断し、休職命令をだすことで休職ということになります。社員は通常、休職期間中に給与をもらうことができません。一般的には傷病手当金を受給しながら暮らすことになります。
今回の事例のケースでは、まず休職命令を書面でだす必要があります。休職期間内に復職に至らない場合に「自然退職」とする就業規則の規定があれば、対応に困ることはないでしょう。
この規定がなかった場合には、不安定な立場での雇用を継続するほかありません。