大新聞・テレビで一斉に報じられた「財政悪化の懸念」
物価高が止まらず、実質賃金は下がり続けているが、「減税」は実現しない。その背後で暗躍している財務省が、メディアの論調すらコントロールしているというのだ──。
与野党の予算修正協議のさなか、朝日、読売、毎日、日経が同じ内容の記事を報じた。
〈「103万円の壁」引き上げ、「追加の歳入確保を」IMFが声明〉(朝日新聞デジタル、2月7日付)
国際通貨基金(IMF)が記者会見を開いて日本の財政運営に対する声明を発表し、「103万円の壁」引き上げなどを「財政赤字が拡大する大きなリスクがある」と指摘。高所得者への金融所得課税強化など財政健全化を促したという報道だ。
会見を仕掛けたのは財務省。〈IMF職員が財務省や日本銀行の幹部らと面談し、声明をまとめた)(前掲朝日新聞)とある。
昨年末に国民民主党が「手取りを増やす」と103万円の壁引き上げを主張した時も、新聞・テレビは一斉に「7兆~8兆円の税収減」と自治体の反発を報じた。減税を求めているのだから、税収が減るのは当然だ。
財務省が握っている“新聞社の急所”
なぜメディアは“隠れ増税推進記事”とも思えるような報道をするのか。
「消費税軽減税率や税務調査などをもってして、財務省は新聞社の急所を握っていることの影響が考えられます」
そう語るのは元東京・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏だ。
安倍政権時代の消費税引き上げの際、大手新聞各紙は「消費税引き上げ賛成」の論調を取った。その一方、新聞協会など業界を挙げて「新聞は生活必需品だから食料品と同様に軽減税率を適用すべき」と政府・財務省に新聞への軽減税率の適用を求め、それが実現した。
「新聞の部数が大きく落ち込むなか消費税率が引き上げられれば、部数はさらに下がります。普通なら消費税増税反対の立場を取るでしょう。ところが、大手各紙は消費税引き上げは必要という論陣を張った。財務省との間で『消費税率引き上げには賛成するから、新聞には軽減税率を適用してもらう』という取引を行なった構図でしょう」(同前)