しかし、葬儀は非日常的行事ですが、一時的なことであり、静謐な儀式であって、周囲に迷惑をかけるようなことではなく、むしろ亡くなった住民を偲ぶ厳粛な気持ちを抱かせるものです。
管理会社は、遺体が居室内にあることに嫌悪感を抱く人がいることを慮っての対応かもしれません。それでも死者を弔うため、ごく短期間、故人が親しんだ居室内で親族や知人が別れを惜しむことに、大抵の人は不快感を抱くことはないと思います。なので故人の遺志を尊重し、葬儀を行なっても契約違反になることはありません。
もっとも、多くの弔問者が予想され、住民の暮らしに多大な迷惑をかける恐れがある場合には、事前に住民の方々に理解していただくことが必要となります。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年3月21日号