ルビオ国務長官(Getty Images)
米国の政治経済に詳しいジャーナリスト・中岡望氏が言う。
「3月6日の臨時閣議で、マスク氏が政権の外交トップであるルビオ国務長官に向かって『国務省は人員削減をしていない』と非難したのです。ルビオ氏は『やっている』と反論。トランプ氏は、『(マスク氏に)人員配置や政策の決定を行なう権限は与えていない』などと発言してルビオ氏を擁護しましたが、政権内部の亀裂が明らかになった一件でした」
さらにマスク氏は、政権ナンバー2のバンス副大統領とも対立を厭わない姿勢だという。国際政治経済学者で元参院議員の浜田和幸氏が言う。
「トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領との会談で“横槍”を入れて破談のきっかけを作ったバンス氏は、次期大統領の座を狙う野心家です。トランプ氏に最も気に入られたいマスク氏にとっては、面白くない存在となっています」
マスク氏の言動によって浮き彫りになるのは、世界経済に甚大な影響を及ぼすトランプ政権が一枚岩どころか、実は危ういバランスの上に成り立っているという現実だ。
対立する他の側近を追放へ
中岡氏はトランプ政権には複数のグループ・支持基盤があると指摘する。
「トランプ氏が選挙中から掲げる『MAGA(Make America Great Again)』のフレーズに共鳴する保守主義者や白人労働者、対中強硬路線に走る極右系、そしてマスク氏に代表される“IT富豪グループ”などの集合体がトランプ氏を支えています。“反リベラル”といった点では一致しているものの、土台となる考え方が異なるため、さらに亀裂が深まる可能性はあるでしょう」