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田代尚機のチャイナ・リサーチ

ウォルマートのトランプ関税対策が中国から大ブーイング 製造業の米国回帰は実現可能なのか?直面する“中国外し”の難しさ

トランプ関税で「中国だけを孤立させる」ことは可能なのか

 ウォルマートの取り扱う輸入品は加工食品、日用雑貨、衣料品、家具、家電など広範にわたるが、一部の家電を除けばそれらは、それほど複雑なサプライチェーンを持つわけではない。米国政府がどうしても国内に産業を回帰させたいのであれば、実現可能かもしれない。しかし、自動車、半導体のようにグローバルに複雑なサプライチェーンを形成している産業や、規模の経済が大きく働く素材産業などでは、他国との密接な協力関係の構築、自由な取引の維持が不可欠だ。

 中国の製造業GDP(名目、ドルベース、国連)が米国を超えたのは2010年だが、第一次トランプ政権が対中強硬策を打ち出し始めた2018年では米国の1.71倍、2023年では1.68倍であった。この間、その格差はわずか0.03ポイントしか縮小しておらず、第一次トランプ政権、バイデン政権を通じて、一貫して実施してきた対中強硬策は、追加関税政策を含め、中国の製造業を抑制する効果はみられなかったと言えよう。ちなみに、中国の製造業GDPが日本をはじめて上回ったのは2007年で、2018年は日本の3.72倍であったが、2023年には5.67倍にまで格差が広がっている。

 トランプ関税の最大の目的は、中国だけを孤立させること、つまり、同盟国との関係を強化し、市場とある程度のサプライチェーンを確保した上で、中国だけを大きな経済サイクルの外に押し出すことだろうが、それは現在行われているグローバルでの追加関税政策、アメリカ第一主義、孤立主義と矛盾する。

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