中国との関係改善で米国の国益を最大化させる方針への急旋回も?
そもそも、天安門事件が発生した直後の1990年あたり、あるいは米国が中国に対して最恵国待遇を与え事実上、中国のWTO加盟を認めた2000年あたりならまだしも、前述のように、中国の製造業の規模が世界最大となってしまった現在、中国外しは極めて難しい。グローバル経済を一度破壊し、ゼロから再生する以外に方法はないだろう。
利害・損得に敏感で朝令暮改を辞さないトランプ大統領のことだから、逆説的に言えば、イーロン・マスク氏が行っているような中国の成長に乗って利益を得る、中国政府との関係を改善・強化して米国の国益を最大化させる方針への急旋回もあり得るだろう。
別の話だが、イーロン・マスク氏が政府効率化省で進める規制緩和、政府の無駄の削減、とりわけ国際開発庁の閉鎖などは、既得権益層との激しい摩擦を生んでいる。
第二次トランプ政権による諸政策は単なる公約の実行ということではなく、数十年にわたって深刻な構造問題であり続ける巨額の貿易赤字、財政赤字の根本的な要因を取り除くということであるなら、必要となる破壊の規模は想像もつかない。少なくとも、破壊の先にある再生への道筋が見えてこないことにはグローバル投資家の不安は払拭されないのではないか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。