「じっくり学問談義する時間がなくなった」
私立大学で教育学関連の講義を担当している男性教員・Bさん(50代)は、就職活動の早期化や「大学の就職予備校化」に伴い、教員と学生の飲み会のあり方も変化しつつあると語る。
「私が学生の時代、とくに大学院生の頃は、ゼミのあとの飲み会が貴重なディスカッションの場であり、情報交換の時間でした。論文や学会発表の相談をしたり、指導教員に『学者の裏話』を聞いたりして、非常に有意義な時間だったんです。学部生の頃も、ゼミの教員や授業を受けている他学部の先生たちとワイワイ飲みにいくこともありましたね。
では、なぜ令和の今、それが難しくなってきているのか。その理由のひとつに、就職活動の早期化があると思います。就活への意識が高い学生は、1年生、2年生のうちから就活をスタートさせます。企業研究、ガクチカを意識したボランティアや留学、部活動、それからインターン、OB・OG訪問と、内定というゴールだけを目指して学生生活を送ります。
そんななか、ゆっくりと学問のために時間を割いたり、ましてや卒論に時間をかけて取り組み、教授と飲み会で学問談義をする時間は取りづらいでしょう。コスパ感覚から考えても、『わざわざゼミの教員と飲んで何になるの?』『それなら友達と遊んだり、推し活にお金を使いたい』という気持ちもわかります。ただ、じっくりと腰を据えて、あれこれと学問について議論をする空間が失われるのは、少し寂しい気持ちもありますね」(Bさん)
就職活動が前倒しされることで、「少しでも早く就活に取り組む方がコスパがいい」と考える学生もいる。そうした風潮のなかで、学生の本分であるはずの学問に費やす時間は「コスパが悪い」とする認識も広がりつつあり、“学問離れ”を懸念する声も出ているようだ。
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