就職予備校化する大学の実態とは(写真:イメージマート)
昨今の就職活動市場は、学生に有利な「売り手市場」が続いている。一方で就活の開始時期が早期化していることに伴い、学生たちのあいだからは、学業や部活動との両立の難しさや、選考プロセスの長期化により精神的、身体的な疲弊を感じているという声も聞こえてくる。
もっとも、苦労しているのは学生だけではないようだ。大学が「就職予備校化」しつつあるなか、就活対策の専門家を雇用したり、就活対策カリキュラムを導入したりと、大学側でも就活の早期化に翻弄されている面が少なからずあるという。就職予備校化する大学の実態についてレポートする。【前後編の前編】
相談室に訪問する学生が増えている
都内の私立大学に勤務する大学教員の男性・Aさん(40代)は、近年、入学早々から就活に対する不安を抱えた学生たちのメンタルケアが課題だと話す。
「10年ほど前と比べて強く感じるのは、就職活動の早期化によって“就活疲れ”をしている学生が増えたことです。内定が早期に取れた学生は生き生きとした様子で大学に通っていますが、就活がうまくいかない学生は、成功した学生を見てメンタルを悪化させてしまう。早々に内定を取った学生の存在が、他の学生に対する焦りをより一層加速させる面もあります。
また、学内のキャリアセンターでは、就活状況を確認するため、定期的に学生に電話で連絡を取っているのですが、そうした電話が鳴るだけで、うつ症状が悪化したと訴える学生もいます。SNSでは就活に関する情報も飛び交っているので、四六時中、頭から就活のことが離れない状況になっている。抑うつ的な症状を抱え、相談室に訪問する学生も毎年増えています」(Aさん)