「ばあちゃんビジネス」で注目を集める大熊充氏
日本は今、高齢化が加速度的に進行すると同時に、様々な社会問題をはらんでいる。そんな中、福岡県うきは市に、2019年に設立された会社が今、国内外から注目を集めている。会社の名前は「うきはの宝」、従業員は75歳以上の“おばあちゃん”。目的は、地域のおばあちゃんに「収入」と「生きがい」を提供すること。
うきはの宝は、ばあちゃんたちの智恵を活かして「ばあちゃん飯」に「ばあちゃん食堂」「ばあちゃん新聞」「ユーチュー婆」など、「ばあちゃん」をキーワードにした商品を次々とヒットさせている。同社を創業した地元出身の大熊充氏の著書『年商1億円!(目標)ばあちゃんビジネス』より、同社創業のきっかけとなった、地方の高齢者のリアルな声を紹介する。
年金だけじゃ、食っていけない
お金がない──。それも高齢者が外に出ない理由のひとつでした。
実際に『ジーバー』(*注/大熊氏がうきは市で始めた高齢者向けの無料送迎のボランティア)で買い物に連れて行っても、みんなほとんど何も買わないんです、お金がないから。
二カ月に一度、決まった年金をもらうんだけど、一人暮らしで家賃を払ったら、もう残りはわずか。食料品の買い出しひとつにも躊躇するわけです。貯金額までは知らないけど、年金だけじゃとても暮らしていけないことだけはよく分かった。
ある時思いきって「生活費、いくら足りないの?」と聞いてみました。するとほとんどの人がこう言うのです。
「あと月に二、三万円あればラクになるんだけどね……」
約三千人にアンケートを取ってみて、社会から見た真実、僕から見た真実、高齢者から見た真実が、それぞれ分かってきました。
でも、事実はひとつだけ。
「年金だけじゃ、金が足りない!」
とはいえ、年金は上がらないし、国からだって単純にお金は引っ張ってこられない。だから、思いました。
「それならみんなで働いた方が良くない?」
実際に僕が話をした高齢者の六人に一人は「雇ってくれるところがあるなら、働きたい」と言っていました。世の人は「働きたいなんて言う年寄りがいるわけねえ」と思っているみたいだけど、確実にいるんです。
七十歳までは仕事がある。でも七十五歳からは仕事がなくなるという現実にも納得がいかなかった。
だったら七十五歳からでも働ける会社があればいいんじゃないか──。これが、うきはの宝を立ち上げるきっかけになりました。