飲食チェーンに求められる「小さなマクドナルド化」
このような「非人的運営」の裏には、社会学者のジョージ・リッツァー氏が論じた「マクドナルド化する社会」(The McDonaldization of Society)という合理化思想がある。スピード、効率、予測可能性、技術依存、感情の排除。これらを徹底することで、業務はロスのないシステムに昇華される。そこで排除されたのは職人技でも、現場の創意工夫でもなく、「ムダ」である。
他業種では不可能なほどの緻密な標準化とマニュアル化を貫くマクドナルドの収益性は、この合理化思想の産物である。個別店舗の工夫や多様性よりも、「誰が、いつ、どこでやっても、同じ結果が出る」ことが、スケールメリットと利益率を支える土台となる。
ペッパーフードサービスが店舗網を最適化し、オーダー体系を定量化し、タブレットを導入して省力化に舵を切ったことは、マクドナルドのこの構造改革と軌を一にする動きである。飲食チェーンにおいて重要なのは、「小さなマクドナルド化」を社内に取り入れ、メニューの質を落とさずに、合理化によってまずは損益分岐点をとにかく下げることである。
飲食業の再建において、最初にやるべきことは、いかに「現場の属人性」を排除し、再現性と標準化でコストを落とせるか。感情ではなく構造で戦う。個性ではなく精度で利益をつくる。まずは徹底的な合理化で収益力をつけ、高い成長の基盤を築く。──これが、あらゆる飲食業に共通する第一歩である。
【プロフィール】
小倉健一(おぐら・けんいち)/イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立して現職。