退任した内田誠・前社長(時事通信フォト)
トランプ大統領による関税強化に揺れる自動車業界。なかでも苦しいのが業績不振にあえぐ日産だ。ホンダとの経営統合破談を受け、経営陣が大幅刷新。イヴァン・エスピノーサ新社長のもとで難局に臨むが、大きな力を持つ“影の支配者”の存在が見えてきた。ジャーナリスト・井上久男氏がレポートする。【全3回の第2回。全文を読む】
日産の独自の「ガバナンス体制」とは
少し時を遡り、経営陣交代の流れを説明する。3月11日、日産の内田誠社長兼CEO(58)は記者会見した。同31日付で社長を退任し、6月の定時株主総会で取締役も退く人事を発表した。その後任に選ばれたのが46歳のエスピノーサ氏だった。内田氏は「経営責任を問う声が従業員から出るようになり、社内での信任を得られなくなった」などと退任の理由を語った。
昨年12月23日のホンダと日産の経営統合交渉入りから、3月11日までの約3か月間、交渉の状況は目まぐるしく動いた。内田氏は2月5日、取締役会に破談の意向を伝え、翌6日にホンダに対し、子会社化の提案は受け入れられないと通達。
これを受け、両社は2月13日、取締役会を開いて破談を正式に決議、発表した。
「スピード感が重要な時代に持ち株会社と事業会社のガバナンス体制を構築することに時間がかかり過ぎていることに危機感を持ち、ワンガバナンス(子会社化)を提案したが、合意点を見いだせなかった」と、ホンダの三部敏宏社長は説明。
一方の内田氏は「持ち株会社の下でお互いの強みを発揮することを重視していたが、子会社化によって日産の強みを引き出すことは難しい」と語った。