「フジテレビ問題ではCM出稿企業の経営者も問われている」と語る元ネスレ日本社長の高岡氏
3月末に第三者委員会の調査報告がなされ、山場を迎えると見られるフジテレビ問題。元ネスレ日本社長の高岡浩三氏(ケイアンドカンパニー代表取締役)は、フジテレビでのCM放映見送りを実施したスポンサー企業が問われているのは、「経営姿勢」そのものだと説く。いったいどういうことか。フリーライターの池田道大氏が聞いた。【全5回の第2回。第1回から読む】
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中居正広氏による女性問題とその後の対応をめぐって、300社以上の企業がフジテレビのCMから手を引いた。元ネスレ日本社長の高岡浩三氏は、「この問題では、CMを出稿する企業の経営者も問われている」と語る。
「特に大企業が使う広告費は莫大な金額で、僕が入社したころのネスレは『ネスカフェ ゴールドブレンド』の“違いがわかる男”の宣伝などに年間400億円を投じていました。それだけの金額を使う以上、広告費は完全に社長案件で、何かしらのトラブルが生じた場合は、社長の責任が問われました」(高岡氏・以下同)
そんな高岡氏が振り返るのは、ネスレ日本社長時代のある決断だ。当時、高岡氏はテレビでお馴染みだったジャニーズ事務所のタレントをCMに起用しなかった。そこにはトップとしての危機管理があったという。
「実は当時から、ジャニーズ事務所の創始者であるジャニー喜多川氏の性加害について、業界内に噂がありました。スイスにあるネスレ本社は喜多川氏のことなんて何も知らないけど、日本にいる僕は噂レベルで聞いていたわけです。そんな状況でジャニーズのタレントをCMに起用して喜多川氏のスキャンダルが明らかになったら、ネスレでは宣伝担当だけの責任にしておしまいではなく、社長が責任を負わないといけません。そこまで見越して、ジャニーズのタレントを起用しなかった。もちろん、“違いがわかる男”シリーズにもジャニーズの面々は登場していません」
2023年9月、ジャニーズ事務所は記者会見を開き、喜多川氏の性加害を初めて認めて謝罪した。会見を機にジャニーズのタレントを起用したCMを打ち切る企業が続出したが、その際に高岡氏は自身のFacebookでこう発言した。
〈今更、ジャニーズ事務所のタレントと契約しないという大手クライアントこそ、この手の問題を知っていたはずだし、知らなかったとしたら恥ずべきことだ〉
高岡氏がFacebookに投稿した発言の真意とは?