投資初心者はトランプ・ショックにどう向き合えばよいか(写真/AFP=時事)
トランプ米大統領が打ち出した「相互関税」に世界の株式市場が揺れている。4月4日の日経平均株価は一時1400円を超える下げ幅を記録。米国のダウ平均やNASDAQも大きく下げた。こうした急落局面や先行き不透明な市場環境においては、保有する株や投資信託などを持ち続けていいのか不安になるものだが、投資で億超えの資産を築いた“億り人”はどういった考えのもと行動するのか。金融資産2億円を突破し、現在は資産収入と労働収入で生活する“サイドFIRE生活”を実践する東山一悟さん(56)に話を聞いた。
東山さんは50歳でリストラを宣告され、2020年に勤め先のメディア企業を退職することになったが、投資による7000万円の資産があったため大慌てすることはなかったという。退職後も順調に資産を増やし、4年ほどで資産2億円に到達。今年1月には『投資で2億稼いだ社畜のぼくが15歳の娘に伝えたい29の真実』(JTBパブリッシング)を上梓した。
現在は再就職先で好きな仕事にストレスなく取り組み、趣味の映画鑑賞や旅行を楽しむ日々だというが、その投資歴を振り返ると決して順風満帆ではなかった。東山さんの経験には、現在の先行き不透明な投資環境を乗り切るヒントもありそうだ。
FXの失敗と金融危機で、増やした資産が4分の1に
「おちこぼれの社畜で、投資も失敗や迷いが多かった」と語る東山さん。早期退職の対象になったと伝えられたのは、2019年秋のことだったという。
「大手メディア企業に勤務し、入社した頃はまさに“24時間戦えますか”がスローガンの時代でした。自分の時間をたくさん会社に捧げてきたのに……と落ち込みもしましたが、最後は割増退職金をもらう道を選びました」(東山さん、以下「」内は同)
翌2020年に会社を辞めて再就職先を探した際は、コロナ禍の影響もあってか50社以上から“お祈りメール”が届いた。ただ、「そこまで焦らなかった」とも振り返る。
「コツコツと投資で蓄えた資産が7000万円ほどあったからです。私が投資を始めたのは1998年、橋本龍太郎首相の“貯蓄から投資の時代”という言葉がきっかけでした。約1000万円の貯金を元手に、株式投資と外貨預金を始めました。最初は『踊る大捜査線』が好きだからフジテレビジョンの株を買うなど、単純な理由で投資先を決めていました」
その後、多忙な日々のなかで東山さんは買った株を放置していたが、気が付くと資産が倍近くに増えていたという。だが、そこで欲を出したことが仇となる。
「2007年にFX(外国為替証拠金取引)で何億も稼いだ主婦のニュースを見て、自分も……と安易に手を出して大失敗。2008年のリーマンショックでも打撃を受けました。2000万円ほどに増えていた資産がアッという間に500万円くらいに減った。“もう投資なんかしない!”と3年くらい証券会社の口座にログインすらしませんでした。2009年に娘が生まれ、教育資金を確保しなければと考えた際も、投資ではなく節約生活に舵を切りました。ただ、この節約マインドは投資するうえでもすごく大切なことと思いますよ。やはり元手が必要ですから」