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名医が教える生活習慣病対策

高尿酸血症が「痛風」を引き起こす仕組み 足の親指の付け根が腫れて靴が履けない…尿酸値が正常値でも発作が起こる理由とは【専門医が解説】

尿酸が結晶となり、関節などに溜まり発作を起こす

尿酸が結晶となり、関節などに溜まり発作を起こす

 日々忙しく働く人が、健康診断で高尿酸血症と指摘された場合、自覚症状がないこともあって、治療が遅れることが多い。そうしたなかで血清尿酸値が急激に下がった時に、激痛を伴う痛風発作が起こることがある──。シリーズ「名医が教える生活習慣病対策」、痛風外来で30年以上診療してきたJR東日本千葉健康推進センター・市田公美部長が、高尿酸血症が痛風を引き起こすメカニズムについて解説する。【高尿酸血症のメカニズム・前編】

自覚症状がない高尿酸血症

 高尿酸血症とは血液中の尿酸が高い状態のことで、自覚症状がほとんどないため健康診断で気づく人が多いと思います。厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年版)からの推計では、高尿酸血症の患者数は約1300万人と言われ、年々増加傾向にあります。

 日本では男女問わず血液検査で血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた場合に高尿酸血症と診断されます。7.0mg/dLは、体液中で尿酸が溶けきれず析出する数値で、診断基準として採用されています。

 一方、日本以外では、高尿酸血症の基準を男性より女性を1~2mg/dL程度低く設定している場合が多い。女性ホルモンに血清尿酸値を下げる作用があるためで、高尿酸血症患者の90%以上が男性です。

 尿酸は、細胞内の核などの成分であるプリン体が分解されたものです。プリン体は体内で産生されるほか、アルコール飲料や肉、卵類などの食品にも含まれ、大量に摂取すると尿酸が多く産生されることになります。

 通常、尿酸は体内でほぼ一定の量に保たれ、腎臓から3分の2、腸管から3分の1が排出されています。ところが、尿酸が体内で作られ過ぎたり、腎臓や腸管から尿酸をうまく排泄できなくなると、血中の尿酸濃度が上昇して高尿酸血症になります。

高尿酸血症には3つのタイプがある

高尿酸血症には3つのタイプがある

 高尿酸血症は、機序により「尿酸産生過剰型」「尿酸排泄低下型」「腎外排泄低下型」の3つのタイプがあります。尿酸産生過剰型は、尿酸が過剰に作られ血清尿酸値が上昇するタイプで、暴飲暴食や代謝系の病気、薬の副作用などで起こる高尿酸血症です。

 尿酸排泄低下型は、尿酸の排泄がうまく機能しなくなるタイプです。日本人の高尿酸血症の約60%はこのタイプと言われ、尿酸の排泄を担う腎臓からの尿酸の排泄能力低下が原因で起こります。腎外排泄低下型は、腸管からの尿酸の排泄が低下することにより起こる高尿酸血症です。

 これら以外に、尿酸の産生過剰と腎臓からの排泄低下の両方を併せ持つ場合に混合型といい、肥満症の人に多い高尿酸血症と言われています。暴飲暴食でプリン体の過剰摂取が続き、さらに肥満によるインスリンの働きの低下が重なり尿酸排泄がうまく機能しないことで発症します。高尿酸血症は健康診断などでたまたま見つかるケースが多く、見つかっても自覚症状がないため病院で受診しない人が多いのが問題になっています。

次のページ:血清尿酸値が下がると起こる痛風発作、尿路結石
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