血清尿酸値が下がると起こる痛風発作、尿路結石
高尿酸血症の怖いところは、痛風や尿路結石などを引き起こしやすいことです。痛風は血中に溶けきれなくなった尿酸が析出して関節などに溜まり続け、ある時痛風発作を起こします。
痛風発作は血清尿酸値が高くなると起こると思われがちですが、実は血清尿酸値が急激に下がったタイミングで起こることが多くあります。長期間、血清尿酸値が高い状態が続くと、尿酸の結晶が析出して関節の滑膜に付着します。通常はその表面をアルブミンなど生体内の物質がコーティングしているので安定していますが、何かの物理的な刺激のほか、暴飲暴食の改善、尿酸降下薬の服用などで血清尿酸値が急激に低下すると、関節の滑膜に張り付いていた尿酸の結晶の一部が溶けて剥がれ不安定な状態になり、関節内に脱落します。この結晶が異物とみなされ、サイトカインが分泌されて起こる炎症が痛風発作なのです。
発作が起こると、足の親指の付け根が腫れて痛みがひどく靴が履けず、歩けなくなったりしますが、その時の血清尿酸値は正常値であることがよくあります。これは血清尿酸値の急激な低下が関与していると言われています。
痛風発作の治療は炎症を鎮める抗炎症剤やステロイド治療が必須となりますが、絶対に避けなければならないのが尿酸降下薬を新たに開始することです。尿酸降下薬の作用で血清尿酸値が急激に変動し、痛風発作が別の関節にも起こったり、炎症がよりひどくなることがあるので注意が必要です。
高尿酸血症は尿路結石のリスクも高くなります。尿路結石症は腎臓から尿道までの尿路に結石ができる病気で、生涯罹患率は男性で約15%、女性で約7%と決して低くありません。腎臓に生じた石が尿管内に落下して尿路閉塞が起こると、突然激しい痛みに襲われ、中には腎盂腎炎を併発し高熱が出ることもあります。
尿路結石はシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムなどが固まったものですが、実は析出した尿酸などが核となり、その周囲にシュウ酸カルシウムなどが付着することで雪だるま式に大きくなり結石となる機序も考えられているのです。
「高尿酸血症は健康診断などでたまたま見つかるケースが多い」と語る市田医師
■後編記事:腎機能にも悪影響を及ぼす「高尿酸血症」は遺伝子変異や暴飲暴食・肥満などが発症要因に 治療の基本は生活習慣の改善、2020年には新薬も保険承認
【プロフィール】
市田公美(いちだ・きみよし)/東京薬科大学名誉教授、JR東日本千葉健康推進センター部長。1982年東京慈恵会医科大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科をへて、2007年東京薬科大学病態生理学教室教授に就任。2023年よりJR東日本健康推進センター千葉健康推進センター部長。
取材・文/岩城レイ子