「帰国枠」は「ズル」なのかという自問自答
中高時代をイギリスで過ごし、帰国枠で大学受験をしたハヤトさん(仮名、24歳/大学院生)は、「一般入試じゃ絶対無理な大学でも帰国枠の選考は科目が少なくて楽そうなので、ラッキーだと思った」と、その受験を振り返る。
「正直、海外でいわゆる名門大学に行くのは無理だと思ったんです。でも、日本で帰国枠を使えば、偏差値の高い大学でも行けるなと。そこで大学は日本で通うことを選択し、入試では帰国枠を利用しました」
ただしいざ入学すると、「引け目があった」と苦笑いだ。
「考えすぎだとは思うんですけど、『あなたは正規ルートじゃ無いでしょ?』みたいな見方をされている気がして……。他人から『○○大学? じゃあ受験勉強大変だったでしょ?』と言われて、帰国枠で入ったことを明かすと、『あぁ……』と、なんだか残念そうな顔をされるような(笑)。『いいなあ、英語できて』とか、『親ガチャ大当たりだよね』とか言われることもよくあります。もちろん仲間内での“ネタ”ですし、正直私もそこに異論はない。ただ、ズルをしているわけではないんですけど、少しだけ申し訳ない気持ちになります」(ハヤトさん)
「帰国子女」を他の学生はどう見るのか
帰国子女、あるいは帰国枠で入学した同級生に対して他の学生はどう感じているのだろうか。まず“別ルート”であることについては、
「試験が楽なことに、本気で“ズルい”とは思ったことない」(法学部/3年生/女性)
「その受験資格があるなら活かすべき」(社会学部/1年生/男性)
と、特に気にしていない人が多いもよう。では、帰国枠で入学した人たちに思うことはあるのか。
「自由人というか、自分の意思をつらぬく人が多い印象はある」(文学部/2年生/女性)
「ハッキリものを言う人が多いイメージです」(法学部/1年生/男性)
「敬語とか、食事マナーで時々ぎょっとすることはあるけど、逆に僕たちが海外に行ったら同じようなことになるかもしれない。教えてあげれば済む話なので、別にそれでどうこうということはない」(商学部/3年生/男性)
ただし「帰国枠」は、近年大学受験においては廃止・縮小の流れがある。たとえば2021年度には早稲田大学の文・文化構想・人間科学・スポーツ科学が募集を停止、2025年度には慶應大学も文・商・看護医療・薬学部などが募集を停止した。背景には帰国子女を“特別扱い”せず、学力以外の活動や貢献を総合的に評価する総合型選抜(旧AO入試)の増加があると指摘される。
就職活動を終えた前出のユリさんは、来春からは外資系コンサルティング会社で働く予定だ。「大人になったら帰国子女かどうかなんて関係ない。武器にできるものはどんどん磨いたらいいと思う」と話した。