30代女性会社員・Bさんは「家賃」をよく聞いてくる人に嫌気がさすと話す。最近、東京・板橋区に引っ越した。個人的には商店街があり、物価も安く住みやすい場所だとお気に入りだというが、家賃を聞かれるのがどうしても苦手だと浮かない顔だ。
「『どこ住んでるの?』から『家賃どれくらい?』と聞いてくるパターンが多いです。『板橋区のあのあたりだからお得だよー、コスパ良くて~』とはっきりした数字を言わずに答えて、答えたくないことを察してほしいというオーラを出すのですが、『なら〇万くらいかなー、そうでしょ?』とダメ押ししてくる。どれだけ知りたいんだよ!と呆れます」
20代の男子大学生・Cさんは、アニメやソシャゲが好きで、よく“お布施”と称してバイト代をグッズや課金などに費やしている。Cさんは好きなモノにお金を費やすことに充実感を覚えており、罪悪感や後悔はないというが、同級生からの冷めた目は感じていると話す。
「『毎月いくら使ってるの?』と聞かれることが多くて、正直に額を答えると、『うわっ、もったいない。そんなにお金に使うなら旅行もできるし、資格とかも取れるよ』などと、“無駄なもの”と、はなから決めつけられてしまうのは辛いです。だから、額は言わないようにしたり、言っても実際より少額にしています」
こうした「いくら?」と聞いてくる困った人たちの心理とは、どうしったものなのだろうか。大月短期大学で心理学を教える川島真奈美兼任講師はこう分析する。
「人はわからないこと、知らないことを不安に思うものです。値段を聞く人は、現状に何らかの不満・不安がある可能性が高い。もちろん、純粋に自分がほしいと思って参考のために聞く場合もありますが、“それを聞いてどうするのか”といった感じで値段を聞いてくる人は、不安を抱えている。相手より自分が劣っていないと思うことでそれを解消したいだけなので、値段自体はどうでもいいんです」
いくらと聞いておきながら、その値段はどうでもいいとはどういうことか。
「自分の予想より高かったら、そんなお金を出して無駄じゃないか、私だったら賢く使うのにと思うことで優越感を抱きます。反対に安い場合は、単純に安心するわけです。相手に嫌な思いをさせるために聞いているわけではなく、自らの満足感のためです。一方で、聞かれるほうは『私の方が充足している』『私の方が優れている』というニュアンスを言外に感じてしまい、嫌な気持ちになる」(川島さん)
何気ない「それ、いくら?」という質問だが、そこには双方のいろんな感情が渦巻いている。それまでの人間関係を壊さぬよう、人に値段を聞くときは注意したいものだ。