現在は実家で楽ができる半面、恋愛や結婚につながる「社会性」が失われたと富田さんが続ける。
「実家で衣食住が満たされているため、社会の中で新しい人間関係を作って生きていく必要がなくなった。その結果深くコミュニケーションする機会は減り、自分が傷つくことや相手を傷つけることを恐れて上っ面の会話ばかりになって、親密な関係に発展しません。傷つき、癒される経験がなければ、なかなか恋愛はできませんから」
親の代理婚活を推進する結婚相談所「オフィス・アン」代表の斎藤美智子さんも、「恋愛経験のない奥手な男女が増えている」と指摘する。
「婚活の場においても、相手と1対1の関係を築けない人が多い。そういう人は自分のことだけを一生懸命にしゃべったり、一方的に相手を質問攻めにしたりするので、会話のキャッチボールができません。“その年までなぜ結婚できなかったんですか?”などといった相手を傷つけるような質問を平気でする人もいる。
リアルな言葉を交わさなくてもLINEのスタンプだけでやりとりができてしまう現代社会では、恋愛が成就するようなコミュニケーション力が育ちづらいのではないでしょうか」(斎藤さん)
斎藤さんの経験からも、親と同居する子供は婚期を逃しやすいという。
「親と子供が同居している家は、家族同士の仲がいいことが多く、“寂しくないから、まあいいか”と結婚を焦らなくなるんです。実際、うちの結婚相談所に入会する親の8割は、子供と同居しています」(斎藤さん)
もしわが子かわいさに提供する衣食住や一家の団らんが、逆に恋愛や結婚の機会を遠ざけているのだとしたら、何とも皮肉な話である。
※女性セブン2019年6月6日号