企業には「社風」が存在する。「おっとりしている」や「猪突猛進型」「ガツガツしている」などと表現されることもあるが、広告業界の場合はどうなのか。これまで多くの広告会社と仕事をしてきた博報堂出身のネットニュース編集者・中川淳一郎氏が、同氏が見てきた印象としての「各社の社風」について述べる。
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別に画一化する意図はないのですが、見事なまでに各社違っているといった印象があります。私も会社員だった時に競合各社と会うことはありましたし、フリーランスになってから各社と仕事をする機会も多いのですが、本当に社風が違っているな、と思います。今後広告業界に就職や転職をしたい方もいると思いますので、あくまでも私の主観を述べます。
◆電通
とにかく「王者の風格」がある。競合プレゼンで電通がいた場合は「どんなとんでもない企画を持ってくるのだろうか……」といった畏怖の念を抱いてしまう。また、大きなキャンペーンが開始した時は「どうせこれも電通なんだろうな」と思ったらその通りのことが多い。やはり、世界一の広告会社という風格を感じられる。一方で、個々人は丁寧な感じの人が多いのだが、組織となった場合は、良くも悪くも「電通様」というプライドが顔を覗かせる印象だ。とはいっても、意気揚々と歩く営業マンのあの姿の頼もしさと、様々なコラボ先を持ち、ダイナミックな展開ができるのは日本でも電通だけなのではないか。
◆博報堂
広告業界には「電博」という言葉があるが、実際のところ、博報堂の社員は「そこまで並び立てないでもいい。電通さんは別格」といったことを言う。とはいっても、内心では「いや、電通に比肩するのはウチだけだ」というプライドも持っている。企画のダイナミックさでは電通に敵わないものの、緻密な作業や、理論の構築力については分がある(ように思う)。電通が「ドーンといっちゃいましょう!」といったイメージがある中、博報堂は「かくかくしかじかなので、こうした展開をやってみてはいかがでしょうか?」といった理詰めの感じか。
◆ADK
広告業界No.3かつ、電通と博報堂よりも先に上場していたというプライドを持っている感覚がある。一緒に仕事をした時は、「とにかく慎重な人が多い」「穏やか」といった印象があった。旭通信社と第一企画が合併してできた会社のため、電通・博報堂と比べ、「ADKはコレ!」といったカラーが私にはまだよく分からない。クライアントとの関係においては、きめ細やかな対応をしているな、という印象がある。一方、子会社の人なのか、本体の人なのかよく分からないことも多く、受注側としては、「この人はどこまでの権限があるのか?」と戸惑うこともあった。