産休・育休明けの女性社員は「産休でキャリアが中断され、自己実現が遅れる」「育休明けは今まで以上に働かないと、会社で居場所がなくなる」という強迫観念にさいなまれがちだ。
また、賤ヶ岳の場合は夫が育休を取っていたため早々に職場復帰ができたものの、多くの家庭では育休を取る夫の方が少ない。ましてどうにか育休を取っても、家事を存分にこなせる夫とは限らないため、妻の負担はさほど減らないケースも少なくない。
実際、妻は夫より働いているというデータもある。東京大学社会科学研究所准教授の鈴木富美子さんの論文によると、夫婦の就労の有無にかかわらず、休日は、妻は夫よりも5時間近く「総労働時間」が長く、夫は妻よりも3~4時間ほど「自由時間」が長い、とされる。休日にゴロゴロする夫の横で、家事に明け暮れる妻の姿が浮かぶ。
2児の母でもあるドラマの原作者、作家の朱野帰子さんもこう話す。
「第2話のワーキングマザーは、自分自身の経験が基になっています。従来の働くママは、周囲の嫌がらせなどに苦しむ女性が多かったように思いますが、私自身は逆でした。自分が好きな仕事を続けるうえで、周囲に負けたくない気持ち、仕事も子育ても両方完璧にしようとする気持ちが強かった。がんばらないとキャリアが失われる、切り捨てられるかもしれない恐怖があり、頼ることができずに追い詰められていきました」
託児所や保育園を充実させ、出産後に復帰できる「職場の環境」を整えるのは、あくまで最低限のことだ。現代の日本人女性の労働環境の問題は、その先にある「職場の意識」があるのではないか。出産や育児を無視して働く男性たちが職場の“基準”であり続ける限り、ワーキングマザーの悩みは解決されない。
※女性セブン2019年6月13日号