菅義偉官房長官は2018年12月の記者会見で、「ジェンダー・ギャップ指数」の順位が日本は149か国中、110位と極めて低いことについて、「この5年間で女性の就業者数は201万人増えている」と述べ、政権が取り組む女性活躍推進の成果を強調した。しかし、本当にそうだろうか。
『アンダークラス』(ちくま新書)の著者で、社会学者の橋本健二さん(早稲田大学人間科学学術院教授)が説明する。
「端的に言えば、女性の就業者数が増えたのは、政府の労働政策の結果ではありません。女性は、“稼がなければ生活できない”という必要に迫られて働いているに過ぎません。
高度経済成長期の日本の景気は安定して上向きで、『一億総中流社会』でした。そのため、多くの場合、女性は働かなくても夫の稼ぎだけで生活できた。しかし、1970年代のオイルショックを機に雇用が低迷、徐々に格差が拡大し始めます。
バブル崩壊を経て、大部分の人は収入が低迷し、夫が働けば家族が食べていける時代は終わりを告げました。未婚女性や離死別女性が増加したこともあり、多くの女性は外に出て働かなければ生活できなくなりましたが、その多くは低賃金の非正規労働者で、今や非正規労働者は女性の56%にも達しました」
1990年代後半には、家計の不足を埋めるべく妻が働きに出たため、共働き世帯が専業主婦世帯を上回った。以降、共働き世帯は増加の一途を辿っているものの、世帯あたりの月の可処分所得は、ピーク時の1997年から約7万円も下落。共働き世帯の増加とは対照的に、収入は減少の一途を辿っているのだ。
転職サイト「エン・ジャパン」のアンケート調査によると、大半の女性が仕事をする理由に「家計のため」と答えた。女性が働くようになったのは家計を支えるためであり、ポジティブな社会参加ではなかったのだ。
※女性セブン2019年6月13日号