国民が信じようが信じまいが、政府はこれまで一貫して「年金制度は将来にわたって安定」(安倍晋三首相の国会答弁)という建前を崩さなかった。だが、元号が令和になった途端、ついに“年金ギブアップ”を宣言した。
〈少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある〉
金融庁の金融審議会が5月22日にまとめた「高齢社会における資産形成・管理」報告書の原案にそう明記されたのだ。同報告書では具体的な根拠も示している。
「夫65歳、妻60歳」の無職の年金生活世帯をモデルケースに、
□実収入20万9198円
■実支出26万3718円
──と平均生活費を算定し、毎月の不足額(赤字)を「約5万円」(正確には5万4677円)と弾き出した。不足額の合計は20年(夫85歳)で1300万円、30年(夫95歳)で2000万円にのぼるという。
この計算に従えば、65歳時点の貯金が500万円の世帯は約8.3年後(夫73歳)、1000万円なら約16.6年後(夫81歳)に“老後破産”の危機に直面することになる。
そこで報告書は「資産寿命」を延ばすことが必要だと指摘する。
〈年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して老後の収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」の充実を行っていく必要がある〉
公的年金ではもう老後の生活を面倒みることができないから、「長く働く」か、「生活を切り詰める」か、「投資」で資産を増やすか自己責任で考えよというのである。