ただ、株式市場はファンダメンタルズ要因だけでは動かない。景気の見通しが悪化したとしても、金融を緩和し、市場に資金を流入させれば、需要が刺激されて株価は上がり易くなる。金利が下がり、資金調達が楽になれば、経営はやり易くなり、設備投資も出やすくなる。実際にそうなるかどうかはともかく、そうした見通しを立てることは可能であり、それがファンダメンタルズ要因から来る懸念を和らげることになる。
これまで出口戦略を模索してきたFRB(連邦準備制度理事会)が利下げに動くのではないか、という観測も出ているが、世界の中央銀行が金融システムの正常化をあきらめ、さらなる金融緩和に動けば、短期的には株価は戻る可能性が高い。つまり、アメリカ株式相場がこの先急落しても、政策発動によって、戻るチャンスがあるということだ。
しかし、株価が戻ってしまうことで、トランプ政権が支持者へのアピールを止めず、国際社会の繁栄において最も重要な自由貿易体制を崩し、経済のブロック化を進める政策を続ける限り、アメリカ経済は本質的には良くならない。潜在的な金融リスクを蓄積しながら、全体としては悪化の一途を辿るだろう。
トランプ大統領再選の可能性が高まれば、NYダウ指数は、高値更新は難しいだろうが、何とか持ちこたえられるだろう。
しかし、その過程で起こるのはバブルの醸成である。数々の矛盾が噴出することになる再選後にはアメリカ株式市場の暴落が待っているのではないか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。