住宅建材メーカー・LIXILでは、創業家と株主がCEO(最高経営責任者)や取締役会人事をめぐって対立し、企業統治(コーポレート・ガバナンス)上の大きな課題を浮かび上がらせている。LIXILは2001年にトステムとINAXが経営統合してできた。取締役会議長として同社を引っ張ってきた潮田洋一郎氏はトステム創業家出身の二代目である。そうした中、プロ経営者として招いた瀬戸欣哉・前CEOと経営路線が対立し、潮田氏は瀬戸氏を事実上、解任した。しかしその過程に不透明な点があったとして、旧INAX創業家出身の伊奈啓一郎取締役らが潮田氏の解任を求める事態に発展した。株主総会を6月25日に控え、伊奈取締役がインタビューに応じた。
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――いよいよ運命の株主総会が迫ってきました。株主総会での狙いは?
「取締役会の構成だけでなく、会社の仕組み自体がしっかりしないといけない。潮田氏や山梨(広一・取締役代表執行役社長兼COO)氏が取締役会からいなくなればいいという問題ではなく、LIXILの事業をよく理解している人物が取締役やCEOに就かなければなりません。
外部から見ると、“トステムとINAX”、“潮田家と伊奈家”の争いに見えるかもしれないが、そうではない。私は潮田家を排除するためにやっているのではなく、上場企業を自分の物のように扱う体制を変えようとしているだけです」
――トステムとINAXが経営統合したとき、伊奈家は潮田家よりも一歩引いたところから経営を支えようとしているように見えました。LIXILで潮田家の世襲色が強まったとき、どう見ていましたか?
「会社の生い立ちから説明すると、伊奈長三郎が伊奈製陶(旧INAXの前身)を創業したときには資金力がなく、工場拡張や設備導入など思い切ったことができませんでした。(TOTOなどを束ねる)森村グループの大倉和親氏に資金援助をお願いしたところ、『森村グループからおカネを出せば、伊奈製陶は子会社のようになってしまい、それは本意ではないでしょう』ということで個人として援助してくれました。その後、モノを作っても売れない時期があり、地元の愛知県常滑市で“来週にも伊奈製陶はつぶれる”と噂された時も、私財を処分しながら援助してくれた経緯があります。そのため長三郎には『自分の会社』という意識は薄く、ステークホルダー(利害関係者)のものという意識が強かった。
一方、トステムは潮田健次郎氏が最後発ながら独力でのし上がってきた自負があり、それが息子の洋一郎氏の行動に表れているのだろう。それは行動様式や振る舞いの違いに過ぎず、どっちがいい、悪いというものではありません。
また、INAXとトステムの経営統合は“対等の立場で”という精神でしたが、実際にはINAXが買収されたという面もありましたから、仕方がない面もあります」
――今回の件では株主や経営トップだけでなく、現役の取締役やINAXの地元の常滑市、上級執行役など、これまで見たことがないほど多くのステークホルダー(利害関係者)が声を上げました。