変わらずにいてくれた友人の存在が力に
若年性認知症の問題の1つは、就業が困難になること。
「夫の場合は、会社が親身に相談に乗ってくれて、診断後、先に退職金をいただき、家のローンをギリギリで完済。59才で傷病手当金をいただきながら休職し、その後退職。今は私が働き、老齢年金などと合わせてなんとかやっています。先々を考えると心配は尽きませんが…」(小夜子さん)
そんな近藤さん夫妻の支えになったのが友人の存在だ。
「高校時代からの仲間がいるんです。『おれ、認知症になっちゃった』と言ったら、最初は『ウソだろ』とびっくりされたけど、以前と変わらずにいてくれた。うれしかったですね。今も年1回はわが家に集まって、食べて飲んで歌って、楽しんでいます」(近藤さん)
認知症を隠す人もいるが、夫妻はオープンにしている。
「隠すと困難が増える気がします。こちらから話せばお互いに気を使わずにすむ。友達などはいろいろ調べてアドバイスをくれるし、夫の散歩につきあってくださるご近所さんも。そんな環境が、症状の維持を可能にしているのかもしれません」(小夜子さん)
今は週4日、デイサービスに通い、若年性認知症の家族会やカフェにも夫婦で積極的に参加している。最近では認知症の当事者として講演会にも登壇。認知症支援団体代表を務める稲田秀樹さんと、ギター弾き語りのフォークデュオ「ヒデ2」を結成し、講演後に行うライブも大好評だ。
「認知症になってよかったとは思いません。でも新たな出会いもたくさんあります。未知の世界に挑むようで、今、充実しています」と近藤さん。
「でも、出先で迷子になったり、浴室からシャワーを出しっぱなしで出て来たり。目が離せないんですよ」と小夜子さんがこぼせば、「それが認知症の本分!」と痛快ツッコミ。思わずみんなで笑い転げた。
※女性セブン2019年6月20日号