老後の虎の子資金である退職金。まとまったお金が入ったことで、自分の趣味・嗜好のための“大きな買い物をしたい”という気持ちになるのは自然なことだ。その代表例のひとつが車だろう。
だが長年、都内の信用金庫に勤めてきた永田さん(61・仮名)はそれでトラブルになった。
「免許は持っていても都内だと車に乗る頻度も限られています。だから定年まではマイカーの購入は控え、家族旅行もレンタカーで済ませてきました。
そこで定年退職の際に、長年働いた自分へのご褒美のつもりで、退職金の3分の1に相当する500万円を使って、夢だったスポーツカーを購入したのです。妻と2人でツーシーターに乗って遠出するなんていいでしょう? 驚かせるつもりで直前まで黙っていたのです。ところが、いざ話を切り出してみると妻が突然、烈火のごとく怒り出したんです」
同い歳の妻の言い分は、「私が家庭を守ってきたからあなたは仕事に打ち込めた。退職金は夫婦の共有財産だ」だった。妻は2週間ほど口を聞いてくれず、娘の懸命の取りなしでようやく和解できたという。